津村記久子が落ち着く
少し精神的な負担があるから、同じ本を読み返すことをあまりしない。
けど、長旅電車旅をきっかけに、Kindleの津村記久子を読み返した。
本当すきだなあとおもう。
津村記久子「浮遊霊ブラジル」の『個性』。
主人公〈森さん〉の、静かな素朴な視線がいい。周囲との関係を捉えていながら、あまり出しゃばらないところや、自分の基準でひとのことをおざなりにしたり、大切にしたりできるところがいい。
森さんは、話すことが苦手なひとからのお茶のお誘いにのって(まずのるところが好きだ)、2時間の間、自分が95%話して別れた後、そのひとからの誠実な長文メールを受け、4時間やりとりをする。すごく好きなエピソード。
ひとのことを否定しないひとだなとおもう。
いきなり身なりを派手にしてきたひとに対して、なんで?ってすぐには聞かない森さんは、相手にそうする理由があることを前提に、その前提を尊重し、自分だけで理解できないか、まず受け取っているきがする。
授業を休んだひとに、その日のノートを詳細にとって渡してあげようとして、一生懸命ノートをとり、その後のお昼時間にノートを見返す森さん。きっと、ノートをとるときも、ノートを見返しながらお昼ご飯を食べるときも、森さんはひとりなんだとおもう。よく分からないけど、そういうところがいい。
森さんになりたいか、森さんの知人になりたいか、聞かれたら、迷うな。
森さんかな。